審美歯科

セラミックは絶対ダメってなぜ?

セラミックは絶対ダメという情報をSNSやインターネットで見たことはありませんか。セラミックの歯を入れて失敗したりトラブルが起きて後悔した人はおられますが、セラミック治療が絶対ダメな治療法と言えるかどうかは、疑問があります。治療法にはなんでもメリットとデメリットがあり、患者さんに合うかどうかが大切です。では、セラミック治療が絶対ダメと言われる理由や、どういう特徴を持った治療かという点まで詳しくご紹介いたします。

セラミックは絶対ダメと言われる理由

インターネットや口コミなどで、「セラミックは絶対ダメ」「セラミック治療で失敗した」という声を目にすることがあります。このような強い言い回しが生まれる背景には、実際に治療後にトラブルを経験した人、過大な期待を抱いて後悔した人、あるいは素材の性質を理解しないまま導入した歯科医院と患者さんのミスマッチなどがあると言えます。

ただし、絶対にダメという表現は過度であり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。セラミックには明確なメリットも存在しており、適切に設計し適用すれば有効な治療選択肢になります。そのためには、絶対ダメと言われる理由を把握して、それがどこまで妥当かを検討することが重要です。

セラミック治療とはどのようなものか

まず、セラミック治療の基本を理解しておきましょう。

セラミックを使った詰め物や被せ物の治療
虫歯で失われた部分を補う際、金属(銀歯)やレジン(歯科用プラスチック)を使うのではなく、セラミックで補う方法です。金属は審美性という点では劣りますし、レジンは大きな虫歯には難しく、吸水性もあるため変色します。

自由診療が基本
セラミック治療は多くの場合、保険診療が適用されず、自由診療となります。審美歯科で行うセラミック治療も、補綴(ほてつ)のために行うセラミック治療でも同様です。

素材の多様性

  • 二ケイ酸リチウムガラスによるオールセラミック
  • 人工ダイヤモンドと呼ばれるジルコニアによるジルコニアセラミック
  • 機械で作製し、セラミックブロックを歯の形に削るセレッククラウン
  • セラミックの内側に金属を入れたメタルボンド
  • 薄いネイルチップのように歯に接着するラミネートべニア

さまざまな設計や材質のバリエーションがあります。

人工歯の見た目を自然にしたり、金属アレルギーの懸念があるなどの理由で選ばれることが多く、先進国では金属を使う補綴を制限している国もあります。銀歯の材料である金銀パラジウム合金に含まれるPd(パラジウム)は、ドイツやスウェーデンではすでに歯科での使用が禁止されています。

絶対ダメと言われるリスクとデメリット

セラミックが絶対ダメと言われてしまう主な理由は、リスクやデメリットを理解せず語られるからです。これらを理解したうえで、個別判断をする必要があります。

割れるリスク

セラミックは金属に比べて脆く、変形耐性は低い材料です。噛みしめや歯ぎしり、急に強い咀嚼力がかかる部位では、欠けたり割れたりする可能性があります。特に奥歯などの負荷が高い部位では割れるリスクが増します。万が一割れた場合、再度作製し直す必要が出てくるため、失敗したという印象が残りやすいです。

歯を削る量が多くなる

割れを防ぐためには、セラミックにある程度厚みを持たせて設計する必要があります。厚みを取るためには、健康な歯質を削ることが増える可能性があります。特に削る量を抑えたい歯では、セラミックが適用できないケースもあります。

コストが高い

セラミックは保険適用外の自由診療であることが多く、高い自己負担額となります。たとえば、小さな詰め物でも1本あたり数万円~数十万円のコストになることもあります。多数の歯に適用すると、費用負担が大きくなる点が心理的なハードルになります。

永久に使えるものではない

高価な材料だからといって一生保てると断言はできません。一般的な耐用年数は概ね10~15年程度とされることもあります。接着が外れたり、破損したり、修理や交換が必要になることがあります。患者さんの口腔ケア状態やメインテナンスの頻度、咬合力などに耐用年数は左右され、寿命は短くなることもあります。

素材と種類による違い

同じセラミックといっても、材料や構造によって耐久性や適用範囲が異なります。オールセラミック、ジルコニア、ハイブリッド、内面に金属があるものなど、選択肢が多様です。医療機関が扱う材料の質や技術、設計次第で結果が変わるため、セラミックは万能であると言い切れません。

これらのリスクやデメリットを知らず、過大な期待と組み合わさると、失敗体験や後悔が生じてしまい、セラミックは絶対ダメという断定論が生まれやすくなります。

絶対ダメという表現が過剰なケース

セラミックは絶対ダメだと断言する意見は、多くの場合、誤解や一部の特殊なケースを過度に広げたものと言えます。

個別条件が異なる
上下の歯の噛み合わせの位置、噛み合わせの強さ、歯の位置、形状、歯ぎしりの有無などは患者さんごとに違います。

歯科医師や技工士の腕、設計力が影響する
適切な設計や材質選定、接着技術があれば、割れのリスクを抑えることは可能です。

絶対という言葉の使用が誇張になる
すべての場合に当てはまるように語るのは論理的に無理があります。

選択する治療方法のバランス
他の素材であるレジンや金属にも弱点はあるため、結局はどの素材を選んでもメリットとデメリットの両面を抱えています。

情報の偏りやネガティブな経験が目立ちやすい
成功例よりも失敗例が印象に残りやすい心理が働くため、ネガティブな経験はとても目立ちやすいです。

したがって、セラミック治療だから絶対にやめた方がいいと一律に見なすのは、合理的ではありません。むしろ、個別判断をするための材料とリスクを理解したうえで、適切な治療を選ぶべきです。

セラミック治療のメリット

では、なぜ多くの歯科医院でセラミック治療が行われ、患者さんに支持されるでしょうか。

虫歯再発率が低い

セラミックの補綴物は、歯と隙間なく密着させる設計ができます。詰め物と歯の間の隙間から再び虫歯になるリスクを抑える効果があります。

表面が滑らかで汚れが付きにくい

セラミックは表面が平滑であり、プラークが付着しにくいため、とても衛生的に保つことができます。

金属アレルギーのリスクがない

金属が含まれている補綴物は、唾液によりイオン化されて、体内で蓄積します。ゴールドは金属アレルギーのリスクは少ないと言われていますが、金属を含まないセラミックは、金属アレルギーを懸念する人にとって安全性が高い選択肢です。

審美性や自然な見た目

天然歯に近い色調の調整が可能で、天然歯と人工歯の差が分かりにくいです。周囲から気づかれにくい見た目を実現できます。

長期的な耐久性

適切に設計して維持すれば、金属やレジンより長持ちする傾向があります。

これらは無視できないメリットであり、だからこそセラミック治療が広く導入されてきたと言えます。

絶対ダメを言われた場合に確認すべきポイント

もしもセラミックは絶対ダメだからやめた方がいいと言われたら、その主張を鵜呑みにせず、次のような点を確認して判断材料としましょう。

チェック項目 確認すべきポイント
医師の経験や実績 ・歯科医院や担当医がセラミック補綴治療に豊富な実績を持っているか
・過去の症例写真や患者の声を見せてもらえるか
・使用するメーカーや種類、構成などを明確に説明してくれるか
口腔内力学 ・食いしばりや歯ぎしりの有無
・咬合力の強さや接触負荷の分布
・支台や咬合調整によってリスクを軽減できるか
素材の種類と設計の工夫 ・強度向上のためのコアやフレームがあるか
・薄すぎずかつ削りすぎないバランスを保てるか
・ジルコニアや改良型セラミックなど適切な材料を選択できるか
メインテナンスと定期チェック ・定期的な歯科検診や清掃が実施できるか
・問題が起きた際に早期発見・対処が可能か
・補綴物の割れ、摩耗、接着の緩みを定期的にチェックできるか

これらを確認できれば、絶対ダメという言葉への反論材料になります。

まとめ

セラミックは絶対にダメという主張は、その強さゆえに印象的ではありますが、実際には多くの条件を前提とし、すべてのケースに当てはまるわけではありません。セラミックは適切な設計と材料選定、定期的なメインテナンスを行えば、耐久性、審美性、機能性を兼ね備えた治療となりますが、一方で、割れるリスク、削る量、コスト、寿命限界などのデメリットも無視できません。

重要なのは、絶対ダメかどうかを白黒で判断するのではなく、自分にとって最適な治療を選ぶ意思を持つことです。歯科医師からの説明を丁寧に聞き、複数案を比較し、ご自身の口腔状態、予算、リスク許容度に合った選択をすることが理想です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科豊中駅前アネックス・矯正歯科
院長 中西 洋介

2015年 昭和大学 歯学部卒業。日本口腔外科学会。日本有病者歯科医療学会。日本口腔内科学会。

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クローバー歯科豊中駅前アネックス