「歯並びが悪い日本人って多いかも」と感じたことはありませんか。実際、日本では歯並びの乱れが珍しくありません。一方、欧米では整った歯並びは身だしなみや自己管理の象徴と捉えられており、子どもの頃から矯正治療を受けることが一般的な国も多いです。対して日本で歯並びが乱れやすい背景には、遺伝だけでなく、顎の大きさ、食文化、そして歯並びに対する価値観の違いといった要素が重なっていると考えられます。そこで今回は、日本人の歯並びが乱れやすい理由を、欧米との比較も交えながらわかりやすく解説します。

歯並びが悪いとは?

歯並びが悪いという言葉は普段よく使われますが、歯科では単に見た目が乱れている審美的な問題だけでなく、噛み合わせ(咬合)の機能的な問題を含めて考えることが大切です。

見た目がガタガタ

  • 歯列が弓のような形に並んでいない叢生
  • 犬歯が前方へ出ている八重歯

歯が重なっている

  • 歯と歯の間に隙間がなく一部前後している叢生

歯と歯の間が空いている

  • 歯と歯の間が広く空いている空隙歯列

上下の噛み合わせがうまく合わない

  • 上の前歯が前に出ている上顎前突
  • 下の前歯が前に出ている下顎前突
  • 奥歯を噛み合わせると前歯が噛み合わない開咬
  • 上の前歯が下の前歯を大きくかぶせ過ぎている過蓋咬合(かがいこうごう)

口腔機能にも影響を及ぼす状態を歯科では不正咬合と呼び、矯正治療が検討されます。

良い歯並びとは?

では、反対に、良い歯並びとはどのような状態でしょうか。

前歯の真ん中が上下でそろっている

  • 上の前歯と下の前歯の中心のラインが一致している

上の前歯が下の前歯より少し前に出ている

  • 約2~3mm程度上の前歯が前方にあり、自然な位置関係になっている

上の前歯が下の前歯に軽くかぶさっている

  • 約2~3mm程度上の前歯が深すぎず浅すぎずかぶさり、噛める

奥歯が交互にかみ合うように噛めている

  • 前歯より奥の犬歯から臼歯で、上の歯と下の歯がジグザグに噛み合い、安定している

このような歯並びであれば、歯の機能面や審美面においても問題ないでしょう。

歯並びが悪くなる主な原因

歯並びの乱れには、主に遺伝的要因と環境的要因の2つが関係しています。

遺伝的要因

顎の大きさなどの骨格、歯の大きさが遺伝することで、歯の並ぶスペースが不足することがあります。

環境、習慣的要因

  • 口呼吸の習慣がある
  • 指しゃぶり、舌の癖、うつぶせ寝、横向き寝をする
  • 乳歯が早期に脱落した
  • 柔らかい食事が多く、咀嚼の回数が少ないため顎が発達しない

これらの習慣が一つでも該当したり、複数重なっていると、歯並びが悪くなることがあります。

歯並び悪い状態を放置すると起こるリスク

歯並びの乱れを放っておくと、さまざまな不調を招く可能性があります。健康面や、心理面においてのリスクを挙げていきましょう。

健康面でのリスク

歯磨きしにくいため、虫歯や歯周病になりやすい
正しく噛めないため、消化不良や栄養の吸収に影響
顎関節や咀嚼筋に負担がかかることで、顎関節症、頭痛、肩こりにつながる可能性
歯の乱れにより発音しにくい行がある

心理・生活面での影響

口元の見た目が気になり、笑顔に自信が持てない
他人とのコミュニケーションで消極的になる
見た目の問題ではなく、生活の質(QOL)にも影響する

治療するメリット

歯並びを改善するための矯正治療を行うことで、どのようなメリットが期待できるでしょうか。

口元の見た目が整う
笑ったときに綺麗に整った前歯が見えると、相手へ与える印象が良くなります。第一印象や自信の向上にもつながることが多いです。

口腔健康の改善
歯ブラシやフロスが届きやすくなると、清掃がしやすくなります。虫歯や歯周病のリスクを減らせます。

噛む機能の向上
食べ物をしっかり噛めるようになり、消化や栄養の摂取が効率的になります。

発音が明瞭になるケース
歯並びの乱れが特定の発音に影響する場合、発音が改善されることがあります。

治療するデメリットと注意点

もちろん、矯正治療にはデメリットや注意点もあります。それを知ったうえで、矯正治療を行うことをおすすめします。

費用と期間
矯正治療は保険適用外の場合が多く、高い治療費がかかります。治療期間は通常1~3年程度と長期になることが多いです。

治療中の不快感
矯正装置の装着による違和感や痛みが生じることが多いです。

歯磨きがしにくい時期がある
矯正治療中は口腔ケアをしっかり行うことが大切です。特にワイヤー矯正は歯に装置を付けたままになるため、歯磨きが難しいです。

どんな治療方法がある?矯正の種類

矯正治療には、主に次のような種類があります。

矯正方法 どんな治療? メリット デメリット 向いている人
ワイヤー矯正(表側) 歯の表面にブラケットを付け、中にワイヤーを通して歯を動かす 軽度〜重度まで幅広く対応・実績が多く、コントロールしやすい 装置が目立つ・矯正中と周囲に気づかれやすい ・確実性を重視したい人・難しい歯並びも含めて幅広く検討したい人
裏側矯正(リンガル) 歯の裏側にブラケットとワイヤーを付ける 表から見えにくい・見た目を気にせず進めやすい ・開始直後は発音しにくいことがあるが慣れると軽減・海外で作製することが多く、表側より費用が高め ・見た目を最優先したい人・人前で話す機会が多いが装置は見せたくない人
マウスピース矯正 透明なマウスピースで歯を段階的に動かし、取り外し可能 目立ちにくい・食事や歯磨き時に外せて衛生的・生活に合わせやすい 1日20〜22時間の装着が必要・装着時間が不足すると計画通り進まず、治療期間の延長や、再作製の可能性 ・自己管理が得意な人・見た目と快適さを両立したい人
部分矯正 気になる前歯だけを整える ・全体矯正より期間・費用を抑えやすい・前歯だけ整えたい ・動かす歯が限定されるため、噛み合わせ全体の改善は難しい ・前歯の見た目を整えたい人・軽度のガタつきやすき間のみで部分矯正が適応できる人

日本と海外の歯並びの悪さへの考え方の違い

厚生労働省が平成28年に歯科疾患実態調査(12~20歳)を行いましたが、いわゆるガタガタの歯並びである叢生(そうせい)が約26%、すきっ歯という空隙歯列(くうげきしれつ)が約10%と報告されています。さらに、上の前歯が前に出ている状態かどうかの目安の一つであるオーバージェットは4~5mmが33.6%、6mm以上が6.5%という分布も示されています。日本の不正咬合はおよそ2人に1人といった高めの有病状況が示される研究報告もあります。

日本では八重歯に関して、アイドルがチャームポイントとしていたり、アニメキャラクターの特徴で描かれることもありますが、海外ではこうした歯並びをDevil’s teeth(悪魔の歯)と呼んだり、宗教観の影響もあってネガティブに受け取られる場合があります。さらに、口腔内トラブルの原因になり、放置することで歯並びがより乱れていく可能性もあるため、海外では、歯科医院での矯正治療を検討するのが望ましいとされています。

年齢ごとの治療の考え方

子供から大人まで、矯正治療は全く同じというわけではありません。

子どもの場合

永久歯が生え揃う前の子供であれば、歯並びや顎が完全に成長していないため、 早期の予防や改善が効果的なことが多いです。口呼吸や指しゃぶりなどの習癖を治すトレーニングをして、顎の成長のコントロールをして、永久歯が生え揃うスペースを確保しておくと、将来的に抜歯を行わずに矯正治療ができるということがあります。

大人の場合

大人になってから矯正を始めることは 決して遅くありません。歯を綺麗にするという患者さん自身の強い意志のもとで行うことから、歯列矯正を最後までやり遂げることができやすいです。歯並びを改善することで見た目以外に、健康維持や口腔ケアのしやすさが向上し、歯の長期的な予防につながる考え方もあります。

治療を始めるタイミングと相談のポイント

歯並びが悪いと感じたら、矯正歯科で相談して客観的な評価を受けるのが最初の一歩と言えるでしょう。状態を確認することで、患者さんが悩んでいる審美面よりも、噛み合わせなどの機能面の症状を改善したほうが良いとされることもあります。それぞれの症状を確認し、目標とするゴールに合わせて、治療方法、期間、費用を複数の医院で比較検討するのもおすすめです。

まとめ

歯並びが悪いのではと感じたとき、単なる見た目の問題なのか、機能面の影響を及ぼしているのかを知りましょう。放置すると虫歯リスクや噛み合わせの不調につながる可能性があります。生活の快適さと健康を守るために適切な時期に治療を検討することが大切です。