歯周病

歯周病は遺伝ですか?なりやすさとの関係と予防の考え方

歯周病は遺伝ですか?なりやすさとの関係と予防の考え方

歯周病は遺伝ですか?

歯周病そのものが遺伝するわけではありませんが、歯周病になりやすい体質や環境は遺伝の影響を受けることがあります。

「親が歯周病だから、自分も将来は仕方がないのでは」
「家族みんな歯ぐきが弱い気がする」

このような不安を持つ方は少なくありません。
歯周病と遺伝の関係は少し複雑ですが、正しく理解すれば、必要以上に怖がる必要はありません。

この記事はこんな方に向いています

  • 家族に歯周病の人がいて、自分も不安を感じている方
  • 「体質だから仕方ない」と思って歯周病対策を諦めかけている方
  • 歯周病を予防するために、何から始めればいいか知りたい方

この記事を読むとわかること

  1. 歯周病と遺伝の正しい関係
  2. 遺伝よりも影響が大きい生活習慣や環境要因
  3. 家族に歯周病の人がいても、将来を守るためにできること

 

歯周病は本当に遺伝する病気なのですか?

歯周病は、細菌による感染症です。そのため、病気そのものが親から子へ直接受け継がれるわけではありません。ただし、歯ぐきの性質や免疫の反応の仕方など、「歯周病になりやすい条件」が遺伝の影響を受けることはあります。

歯周病自体は遺伝しませんが、なりやすさには遺伝が関係する場合があります。

歯周病の主な原因は、歯垢の中に潜む細菌です。
この細菌が歯ぐきに炎症を起こし、進行すると歯を支える骨にまで影響を及ぼします。

一方で、遺伝によって受け継がれるのは「病気」ではなく、次のような体の反応の傾向です。

  1. 炎症が起こりやすい体質
  2. 細菌に対する免疫の反応の強さ
  3. 歯ぐきの厚みや血流の状態

これらは歯周病の進行スピードに関係することがありますが、それだけで歯周病になるわけではありません。

「歯周病になりやすい体質」とは何を指すのですか?

歯周病になりやすい体質とは、歯垢に対する体の反応が強く、炎症が起こりやすい状態を指します。これは遺伝的な要素が関係することもありますが、体質だけで歯周病が決まるわけではありません。

体質とは、炎症が起こりやすい反応の違いを指します。

具体的には、次のような傾向が挙げられます。

  1. 歯ぐきが腫れやすく、出血しやすい
  2. 少量の歯垢でも炎症が起こりやすい
  3. 回復に時間がかかりやすい

これらは、同じ歯磨き習慣でも人によって差が出る理由のひとつです。

ただし、体質は「傾向」にすぎません。丁寧な歯磨きや定期的な健診によって、十分にコントロールが可能です。

家族で歯周病が多いのはなぜですか?

家族に歯周病の人が多い理由は、遺伝だけでは説明できません。生活習慣や口の中の環境が似ていることが、大きく影響している場合が多いと考えられています。

家族で似ているのは、体質より生活習慣です。

家族間で共通しやすい要素には、次のようなものがあります。

歯磨きの仕方やタイミング

  1. 食生活(甘い物の頻度、間食の習慣)
  2. 定期的に歯科医院へ通うかどうか
  3. 口呼吸の癖や噛み合わせの特徴

これらが積み重なることで、家族全体が歯周病になりやすい環境になることがあります。

箇条書きで見ると遺伝のように感じられますが、その多くは「一緒に過ごす時間の中で身についた習慣」です。その結果、家族内で歯周病が多い印象を持ちやすくなります。

遺伝よりも歯周病に影響する要因は何ですか?

歯周病の発症や進行において、遺伝よりも大きな影響を持つのは日々の生活習慣です。特に歯磨きの質や健診の有無は、歯周病のリスクを大きく左右します。

歯周病は、毎日の積み重ねで左右されます。

影響が大きい要因を整理すると、次の通りです。

  1. 口腔内に特定の細菌がいる
  2. 歯磨きの精度と習慣
  3. 歯垢や歯石の蓄積
  4. 定期的な歯科健診の有無
  5. 喫煙習慣
  6. ストレスや睡眠不足

特に歯垢は、歯周病の出発点です。どれほど体質が強くても、歯垢が長期間残れば炎症は起こります。反対に、遺伝的なリスクがあっても、適切なケアを続けていれば歯周病の進行を防ぐことは可能です。

特定の細菌とは?

岡山大学などの共同研究グループは、歯周病の発症リスクを決める要因として、遺伝子の個人差(遺伝子多型)よりも特定の細菌の存在が重要であることを世界で初めて明らかにしました。

研究では、口腔内の細菌叢と遺伝子多型を同時に解析した結果、Porphyromonas gingivalis、Lactobacillaceae属、Desulfobulbaceae属の細菌が歯周病と強く関連していることが判明。これらの細菌の存在は、遺伝的要因よりも発症リスクが高い可能性があると示されました。

この成果は、今後の歯周病予防では、特定細菌の検出・管理が重要になることを示唆しています。また、研究者は将来的に「個々人の細菌リスクに合わせたオーダーメイドの予防法」の確立を目指すとしています。

(論文掲載誌:International Journal of Environmental Research and Public Health, 2021年6月14日公開)

出典:歯周病は遺伝子の個人差より特定の細菌の存在がリスクになることを明らかに(岡山大学)

歯周病における「遺伝」と「生活習慣」の影響の違い

項目 遺伝の影響 生活習慣の影響
歯周病そのもの 遺伝しない 歯垢の管理不足で発症・進行
影響する内容 炎症の起こりやすさ、免疫反応の傾向 歯磨きの質、健診の有無、喫煙など
コントロールの可否 自分では変えられない 日々の行動で改善できる
影響の大きさ 間接的 非常に大きい
将来への影響 進行しやすさに差が出ることがある 歯を守れるかどうかを左右する

このように、歯周病は遺伝よりも生活習慣の影響を強く受ける病気です。生まれ持った体質は変えられませんが、歯磨きの習慣や歯科医院での健診は、今日からでも見直すことができます。その結果、家族に歯周病の人がいても、将来のリスクを大きく下げることが可能です。

親が歯周病の場合、子どもは何に気をつけるべきですか?

親が歯周病だからといって、子どもが必ず歯周病になるわけではありません。ただし、早い段階から正しいケアを身につけることが将来の大きな差につながります。

「早めの意識」が最大の予防策です。

意識しておきたいポイントは以下の通りです。

  1. 正しい歯磨きを子どもの頃から習慣化する
  2. 歯ぐきの出血や腫れを放置しない
  3. 若いうちから歯科健診を受ける

これらを続けることで、歯周病のリスクは大きく下げられます。家族に歯周病の人がいる場合は、「何もしない不安」より「早く動ける強み」があると考える視点も大切です。

遺伝が気になる人こそ意識したい歯周病予防とは?

遺伝が気になる人ほど、予防の効果がはっきり表れます。歯周病は、予防の積み重ねによって将来を変えられる病気です。

歯周病は、備えた人から守られます。

具体的な予防の柱は次の三つです。

  1. 毎日の丁寧な歯磨き
  2. 歯科医院での定期的な健診とクリーニング
  3. 自分の口の状態を知る意識

これらを継続することで、体質や家族歴に左右されにくい口の環境を作ることができます。

歯周病は「なってから治す病気」ではなく、「ならないように付き合う病気」です。遺伝を理由に諦めるのではなく、行動のきっかけにすることが、将来の歯を守る選択につながります。

まとめ

歯周病は遺伝する病気ではありません。ただし、なりやすさに影響する体質や環境は遺伝や家族の生活習慣と関係することがあります。

大切なのは、「どうせ遺伝だから」と考えることではなく、「だからこそ早めに守る」という視点です。歯周病は、正しい知識と日々のケアによって、将来を変えられる数少ない病気のひとつです。

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この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科豊中駅前アネックス・矯正歯科
院長 中西 洋介

2015年 昭和大学 歯学部卒業。日本口腔外科学会。日本有病者歯科医療学会。日本口腔内科学会。

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クローバー歯科豊中駅前アネックス