歯周病

歯周病を引き起こすジンジバリス菌の有害性について教えて

歯周病を引き起こすジンジバリス菌の有害性について教えて

クローバー歯科豊中駅前アネックス 歯科医師 中西 洋介

歯周病の原因となる細菌の代表とされるジンジバリス菌による炎症や病気についてご説明します。

ジンジバリス菌とはどんな細菌?

ジンジバリス菌

歯周病は細菌への感染によって起こる病気で、歯周病を引き起こす細菌の代表がジンジバリス菌です。ジンジバリス菌は他の細胞が作るたんぱく質やお口の中の食べかすをエサにして増殖していきます。

ジンジバリス菌は約30%の成人の口の中に生息しており、6種類のタイプがあります。その中でもパンチパーマ型と呼ばれるⅡ型がいると歯周病の発症リスクが44倍高くなるといわれています。

ジンジバリス菌はたんぱく質を分解するために酵素を作ります。その中でもジンジパインという酵素には高い病原性があり、歯周病を急速に進行させることがわかっています。

また、ジンジバリス菌は5型線毛という特殊な線毛を持ちます。細菌の表面に密生している3~8nm幅の線維状構造物のことを線毛といい、歯周病菌の中で線毛をもつのはジンジバリス菌とアクチノマイセテムコミタンス菌の2つです。これらの二つの細菌は線毛を使って歯の表面にバイオフィルムを形成します。

歯周病は細菌への感染で起こる

歯周病は歯周病の原因となる細菌に感染することで発症します。お口の中には300~400種類の細菌がおり、その中で歯周病の原因となる細菌は、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A.A菌)、プロフィロモナス・ジンジバリス(P.G菌)、プレボテーラ・インテルメディア(P.I菌)、スピロヘータなどです。

これらの細菌は空気を嫌う嫌気性の細菌であるため、歯と歯茎の間の溝(歯肉溝)の中に入り込んで繁殖します。歯周病菌が歯周ポケットに入り込んで繁殖すると、歯肉に炎症が起こります。すると歯肉は歯面から剥がれて歯周ポケットがどんどん深くなっていきます。同時に歯肉が腫れて、出血が起こったり、歯茎に膿がたまる症状が出てきて、細菌によって歯を支えている歯槽骨が破壊されていきます。

歯槽骨の破壊がすすむと、歯がグラグラしてきて、やがて歯槽骨が歯を支えきれなくなって歯が抜けてしまいます。歯周病が怖い病気といわれるのは、最終的に歯が抜けてしまうからです。

歯周病菌は血流に乗って全身を巡る

歯周病はお口の中の病気と考えられてきましたが、近年、歯周病菌が歯ぐきから血管に入り、全身を巡ることで動脈硬化などの様々な病気を引き起こすことがわかってきました。
ジンジバリス菌は細胞から細胞へと移動しやすく、歯茎の毛細血管へ入り込んでしまいます。血管に入ったジンジバリス菌は、血液と共に全身に運ばれます。

歯周病菌がお口の中から移動して全身に悪さをするなんて、怖いことですよね。

ジンジバリス菌と動脈硬化の関連もあるとされており、心筋梗塞の発作を起こした患者さんの血液を調べると、ジンジバリス菌が見つかったという報告もあります。

特に血管壁に付着して塊となっている血液などの中に、ジンジバリス菌が多く発見されています。ジンジバリス菌は血管壁に付着しやすく、そこで炎症を起こします。そのためジンジバリス菌が血中に入ると動脈硬化が進行しやすいと考えられています。

ジンジバリス菌は認知症のリスクにも関係している

シニア

歯周病菌は認知症との関連も指摘されています。

認知症は脳にアミロイドβという物質が過剰にたまることから起こるといわれています。最近ではこのアミロイドβがたまる要因に、ジンジバリス菌が関与しているといわれています。

亡くなった方の脳の中にジンジバリス菌がみつかったという研究データがあります。更に、最近の研究では認知症の患者さんの髄液からもジンジバリス菌が検出されて話題になりました。

また、アメリカの製薬ベンチャー会社はアルツハイマー病治療薬の開発と臨床研究を行っており、マウスをジンジバリス菌を感染させると脳にアミロイドβがたまり、ジンジパインの阻害薬を与えるとアミロイドβが減ったという結果が出ています。

認知症だけではなく、細菌では肝臓がんのリスクが高いといわれる非アルコール性肝炎と歯周病の関連性も注目されています。ジンジバリス菌は身体に慢性炎症を起こしてダメージを与えるため、歯周病と様々な病気との関連が研究されています。

ジンジバリス菌から歯茎や身体をまもるためには?

近年、歯周病菌と全身の病気に関する研究が進み、歯周病と全身の健康に関係があることがわかりました。歯周病は糖尿病、心臓病、低体重児出産、骨粗しょう症とも関連があるといわれています。では、ジンジバリス菌から身体を守るにはどうすれば良いのでしょうか。

セルフケアをできるだけ丁寧に行う

歯ブラシ、デンタルフロス

ジンジバリス菌はまず口内で繁殖するため、お口を清潔に保つ必要があります。そのためには、毎日の歯磨きなどのケアがとても重要になります。

年に数回の歯科定期健診

歯科定期健診

毎日歯磨きを丁寧に行っても、お口の中の細菌を全て除去することは出来ません。歯と歯の間や歯と歯茎の間(歯周ポケット)の歯垢は自分では取りにくく、歯石が出来てしまうともう歯ブラシでは取れません。

そのため、年に数回の歯科健診を受けていただき、歯科衛生士による歯のクリーニングを受けていただくことをおすすめします。軽い歯肉炎でしたら歯のクリーニングを定期的に受けて、歯磨きをていねいに行うことで改善します。

喫煙と歯周病にも関連があります

喫煙

毎日15本以上タバコをすう人は、歯磨きを1日に2~3回欠かさず行っていても、歯周病が改善しないというアンケート結果があります。歯周病治療や予防のためには喫煙は危険因子となります。

歯周病を引き起こすジンジバリス菌に関するQ&A

ジンジバリス菌はどのような細菌ですか?

ジンジバリス菌は歯周病を引き起こす細菌の一種で、たんぱく質や食べかすをエサにして増殖します。高い病原性を持つジンジパインという酵素を分泌し、歯周病を進行させることが知られています。

ジンジバリス菌はどのように歯周病を引き起こすのですか?

ジンジバリス菌は歯と歯茎の間の歯肉溝に入り込んで繁殖します。その結果、歯肉に炎症が起こり、歯茎の腫れや出血などの症状が現れます。さらに繁殖が進むと、歯肉が剥がれて歯周ポケットが深くなり、歯槽骨の破壊を引き起こします。

ジンジバリス菌から歯茎や身体を守るためにはどうすれば良いですか?

ジンジバリス菌から身体を守るためには、以下のことを実践することが重要です。
-・毎日のセルフケアを丁寧に行うこと(歯磨き、デンタルフロスなど)
・年に数回の歯科定期健診(クリーニング)を受けること
・喫煙を控えること

これらの対策を実践することで、口腔内のジンジバリス菌の繁殖を抑え、歯茎や全身の健康を守ることができます。

まとめ

歯のキャラクター

歯周病菌の代表的なものとしてジンジバリス菌があります。歯周病菌は歯と歯茎の間の溝で増殖して、歯茎に炎症を起こし、出血や膿といった症状を起こします。そして症状が進行すると歯槽骨が破壊されていき、歯を失うことに繋がります。

ジンジバリス菌の影響はお口の中だけではありません。ジンジバリス菌は歯茎から血管に入り込んで全身に運ばれていき、様々な病気と関連しています。ジンジバリス菌によって起こる歯周病だけでなく全身の様々な病気を予防するためには、毎日の歯のケアと歯科医院での定期健診が効果的です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科豊中駅前アネックス・矯正歯科
院長 中西 洋介

2015年 昭和大学 歯学部卒業。日本口腔外科学会。日本有病者歯科医療学会。日本口腔内科学会。

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クローバー歯科豊中駅前アネックス