歯周病

歯周病は年齢とともに悪くなるの?

歯周病は年齢とともに悪くなるの?

クローバー歯科豊中駅前アネックス 歯科医師 中西 洋介

歯周病は歯を失う原因として最も多く、糖尿病や心臓病などの全身疾患とも深く関わっているといわれます。歯周病は年齢と共に増えたり悪化する傾向があるのかどうかご説明します。

歯周病は50代から増加する

厚生労働省の2005年歯科疾患実態調査によると、全体の7割以上が1日2~3回、毎日歯磨きしているにも関わらず、30歳以上の約80%以上が歯周病にかかっています。

また、歯周病患者数は50代から急に増えることが、2011年の歯科疾患実態調査でわかっています。その原因はいくつか考えられます。

まず、加齢による体力や抵抗力の低下があげられます。10代の青少年では歯周病を発症する確率は低いのですが、40代、50代になると確率が高くなり、多くの人が歯周病にかかってしまいます。それは加齢によって体力が低下して免疫力が下がるので、口の中の細菌のバランスが崩れて、歯周病菌が増殖しやすくなるからだと考えられています。

また、免疫力の低下から、体調を崩すことが多くなるのも原因の一つになります。例えば何かの病気で入院したときやインフルエンザにかかって寝込んだ後に、歯茎が腫れる、出血する等の症状が現れて、歯周病が悪化することがあります。

歯周病の進行は、徐々に悪化していくのではありません。段階的に、急に悪化することがわかっています。そのきっかけとなるのが加齢や病気による免疫力の低下とみられます。

歯周病はどんな病気?

歯周病は、歯ぐきの下にある歯を支えている顎の骨が、細菌感染によってどんどん溶かされ、やがて歯が抜け落ちてしまうという恐ろしい病気です。

最近では、CMなどで歯周病対策のケア用品をよく見かけますが、実は「歯周病ってどういう病気なのかわからない」という人は多いのです。特に歯が丈夫で健康な20~30代までの人は、自分の歯がなくなってしまうなんて想像もつかないことでしょう。

日本人の成人の約8割が歯周病と言われていても、なかなか歯周病のことがよくわからない人が多い大きな原因は、「歯周病には初期症状がなく、しずかに進行する病気だから」です。

生活習慣による歯周病のリスク

1.歯磨きがきちんとできていない

歯磨きを怠ったり、磨き方が甘いなどは、口の中のプラーク・歯石をますます増殖させます。適切な歯磨きで毎日清潔にしている人・定期的に歯のメンテナンスに通っている人などは歯周病になるリスクも低くなります。

2.唾液量の減少によるドライマウス

唾液の分泌量は、1日に約1~1.5リットルほどです。唾液は食物を湿らせて、噛んで砕きやすくし、飲み込みやすくする、お口の中を洗浄・殺菌する、粘膜を保護する、デンプンを分解するなど、様々な作用をもっています。通常は唾液が良く出ていると唾液の洗浄・殺菌作用によって、お口の中は歯周病菌が増加しにくい環境になっています。

唾液の分泌量が減ってしまうのと起こるのがドライマウスで、患者数は約800万人にものぼるとされており、ドライマウス気味の人は多くおられます。

唾液の分泌が減る背景には、唾液腺の異常、糖尿病や腎臓病、自分の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つである「シェーグレン症候群」等の病気が隠れていることもあります。薬の副作用やストレスが原因のこともあります。

3.口呼吸によるドライマウス

口呼吸が習慣化するとお口の中がいつも渇き、唾液が口の中にいきわたらなくなり、洗浄・殺菌作用がはたらかないためプラークが歯についたままになってしまいます。

お口の中が乾くのは歯周病の悪化の原因にもなると考えられます。

4.喫煙

タバコを吸う人は、吸わない人よりも細菌に対して抵抗力が弱くなります。そのうえ、タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ、歯ぐきから血が出にくくなるため、症状に気づきにくいというリスクもあります。

喫煙者の中には食い止められたかもしれない歯周病になるケースが多々あり、タバコをやめると歯周病になるリスクが40%減るといわれています。

5.ストレス・疲れ

心がストレスを抱えていたり、疲労を溜めていたりすると、どんな人でも免疫力が下がり、細菌に感染しやすくなります。十分な睡眠をとって、ストレスや疲労を溜めない健康的な生活習慣を心がけましょう。

歯周病と年齢との関係に関するQ&A

歯周病にかかるリスクは年齢と関係していますか?

はい、歯周病のリスクは年齢と関係しています。特に50代から歯周病の発症率が急に増えます。

加齢による唾液量の減少が歯周病に関連していますか?

加齢による唾液量の減少は歯周病と関連しています。唾液の洗浄・殺菌作用によって口内環境が整い、歯周病菌の増殖が抑えられます。

ストレスや疲労は歯周病のリスクになりますか?

ストレスや疲労は免疫力を低下させ、細菌感染しやすくするため、歯周病のリスクを増加させます。健康的な生活習慣と十分な睡眠を心がけましょう。

まとめ

歯周病 シニア

歯周病は、かつては老化現象のひとつにあげられていました。歯周病は歯槽膿漏と呼ばれ、ひどくなったら歯を抜いて入れ歯をするのが一般的な処置法でした。しかし

現在は歯周病や虫歯をを予防し、80歳で20本の自分の歯を残す予防という概念が国民に深く浸透してきました。

歯周病は、老化による体調不良などによる免疫機能の低下や、良く噛まない、喫煙、歯を磨かないなど生活習慣の乱れがあると進行しやすくなります。

ストレスや加齢でドライマウスが進むことは口内のバイオフィルムを増大させるので、歯周病の原因になります。

加齢による歯周病を予防するには、生活習慣を見直し、食後の歯磨きを習慣化し、禁煙、間食を控えるなど、規則正しい生活が望まれます。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科豊中駅前アネックス・矯正歯科
院長 中西 洋介

2015年 昭和大学 歯学部卒業。日本口腔外科学会。日本有病者歯科医療学会。日本口腔内科学会。

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クローバー歯科豊中駅前アネックス