インプラント

インプラントができない人って?治療前に知っておきたい条件と対策

インプラントができない人って?

インプラントは誰でも受けられるわけではない?

「歯を失ったらインプラントが最適」と言われることが多いですが、実はすべての患者さんがインプラント治療を受けられるとは限りません。

安全で確実な治療を行うには、一定の条件を満たす必要があるのです。この記事では「インプラントができない人」について、ご説明します。

無理に手術をすると失敗やトラブルの原因になることも

無理に手術をすると

インプラントは高い成功率を誇る治療法ですが、条件に合わないまま無理に進めてしまうと…

骨とインプラントがうまく結合しない

インプラントが早期に脱落する

インプラント周囲炎を起こしやすくなる

といったリスクがあります。

そのため、治療前の精密な診査・診断がとても大切になります。

インプラントができないとされる主なケースとは?

以下のような条件に当てはまる患者さんは、インプラント治療が難しい場合があります。

全身の健康状態に問題がある方

重度の糖尿病がある患者さん

糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで、体の免疫力が低下し、傷口が治りにくくなるという特性があります。インプラントは外科手術を伴うため、傷の治癒が遅れたり、細菌感染を起こしやすくなったりすることがあります。

特にHbA1cが8.0以上のような数値が出ている場合、手術によるトラブルのリスクが高まり、治療を見送ることもあります。

ただし、血糖値をしっかりコントロールできていればインプラントが可能になるケースも多く、内科との連携が重要です。

心疾患・脳血管疾患の既往がある方

心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの病歴がある患者さんは、外科処置中の血圧上昇や薬剤への反応に注意が必要です。また、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を服用している場合は、術中・術後の出血リスクが高まるため、薬の調整が必要になることも。

治療に進む場合は、必ずかかりつけ医と連携したうえで進めることが前提となります。

免疫抑制剤を服用している方・がん治療中の方

移植後の免疫抑制剤、あるいは抗がん剤、放射線治療などを受けている方は、体の抵抗力が低下しており、インプラント手術後に感染を起こしやすくなる傾向があります。また、骨の代謝にも影響を与えるため、インプラントと骨の結合がうまくいかない可能性もあります。

医科との連携をしながら、タイミングや全身状態をしっかり確認して進める必要があります。

お口の中の状態が良くない方

重度の歯周病がある患者さん

歯周病は歯を支える骨を溶かす病気であり、インプラントを支える骨にも深刻な影響を及ぼします。この状態でインプラントを埋入しても、周囲の組織が不安定なため、「インプラント周囲炎」という炎症を起こし、脱落のリスクが高まるのです。

歯周病の有無は、歯科医師による歯茎の検査やレントゲンで確認され、必要に応じて先に歯周病治療を完了させてから、インプラントに進む流れになります。

顎の骨が不足している方

インプラントは「顎の骨」に人工歯根を埋め込む治療なので、骨の量と質が非常に重要です。長年歯を失ったままでいると、骨が吸収されてしまい、インプラントを固定するのに十分な厚みや高さがなくなってしまうケースがあります。

ただし、骨造成(GBR)やサイナスリフトといった再生療法を併用すれば、多くの場合で対応が可能です。骨の状態はCTで三次元的に詳しく評価します。

生活習慣が安定していない方

喫煙習慣がある患者さん

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血行を悪くして組織の回復を妨げます。その結果、インプラントと骨が結合しにくくなり、失敗率が高くなることがわかっています。また、喫煙者は非喫煙者に比べてインプラント周囲炎の発症率が2~3倍高いとも言われています。

完全に禁煙できなくても、治療前後だけでも禁煙期間を設けることで成功率を上げることができます。ぜひ相談してください。

歯磨きが不十分な方

インプラントを支える周囲の組織は、天然の歯と同じように歯垢の蓄積に弱く、炎症を起こしやすいです。正しい歯磨きができていないと、インプラント周囲炎を引き起こし、せっかく入れたインプラントが数年で抜けてしまうことも。

歯磨きの習慣やスキルは、歯科衛生士の指導で改善が見込めるため、継続的なメインテナンスと健診が不可欠です。

これらの要因があるからといって、必ずしもインプラントができないというわけではありません。現代の歯科医療では、補助手術や医科との連携により、治療の可能性が広がってきています。大切なのは、「自分が本当に安全にインプラントを受けられる状態か」を歯科医院でしっかりと見極めてもらうことです。

インプラント治療の適応条件と制限事項

厚生労働省が発行した「歯科インプラント治療指針」では、インプラント治療を成功させるための条件として以下の点が挙げられています。

  1. インプラント材料が生体適合性を有すること
  2. 骨に過度な負荷がかからないようにすること
  3. 初期固定が得られていること
  4. 感染がないこと

これらの条件を満たすことで、インプラントと骨の結合(オッセオインテグレーション)が得られ、長期的な安定性が期待されます。

出典:歯科インプラント治療指針(厚生労働省)

条件が整えば可能になるケースもある!

条件が整えば可能になるケースも

実際には、以下のように対策を講じることでインプラントが可能になるケースも多くあります。

  • 骨が足りない場合 → 骨造成(GBR)などの再生療法
  • 歯周病がある場合 → まず歯周病治療をしっかり行う
  • 糖尿病がある場合 → 血糖コントロールを医師と連携して行う
  • 喫煙者の場合 → 治療前後だけでも禁煙をする

インプラント治療の可能性を広げるためには、患者さんご自身の協力もとても重要です。

インプラントが出来ないと言われた場合、まず何をすべき?

「インプラントは難しいですね」と歯科医師に言われたとき、ショックを受ける患者さんも少なくありません。でも、あきらめるのはまだ早いかもしれません。理由と状況をきちんと把握し、適切な対応を取ることで、治療の可能性が見えてくるケースもあるのです。

以下に、最初に取るべき行動をまとめました。

1. なぜインプラントができないのか、その理由を正確に確認する

まず最初に大切なのは、「なぜできないのか」という理由をきちんと理解することです。理由によって、取るべき対策や選択肢が変わってきます。

たとえば…

  • 骨が足りない → 骨造成で対応できる可能性あり
  • 歯周病が進行している → 先に歯周病治療を行えば可能に
  • 糖尿病などの全身疾患 → 主治医との連携やコントロール状況によって判断

その場で理解できなかった場合は、遠慮なく再確認することが大切です。「治療が難しい」と言われても、”なぜ”を明確にすることで、次の一歩が見えてきます。

2. 他の歯科医師にも相談してみる(セカンドオピニオン)

インプラントは専門性の高い治療であり、歯科医院によって判断や技術に差があることもあります。A医院では無理と言われたけど、B医院では「この方法なら可能ですよ」と提案された、というケースも実際にあります。

  • 骨造成やサイナスリフトなど、難症例にも対応している医院を探す
  • 「インプラント専門医」や「口腔外科医」が在籍しているか確認

セカンドオピニオンは、患者さんの「納得して治療を選ぶ権利」を守る手段のひとつです。

3. 全身疾患がある場合は、主治医と相談を

持病が理由で断られた場合には、かかりつけ医や専門医との相談が必要です。

  • 内科や循環器科での血液検査・処方薬の調整
  • 医師から歯科医師への紹介状を書いてもらうケースもあります

歯科と医科が連携することで、より安全で適切な判断が可能になります。

4. 生活習慣やお口の環境を見直す

「喫煙」「歯周病」「歯磨き不足」などが理由でインプラントを断られた場合は、自分自身のケア次第で条件が整うこともあります。

たとえば…

  • 禁煙外来に通ってタバコをやめる
  • 歯科で歯周病治療や歯磨き指導を受ける
  • 定期的な健診で口腔内を清潔に保つ

インプラントは“そのときできない”だけで、「準備すれば可能になる」ケースが意外と多いんです。

5. インプラント以外の治療法も視野に入れる

どうしてもインプラントが難しい場合でも、ほかにも選択肢はあります。

  1. ブリッジ:周囲の歯を支えにして固定する
  2. 部分入れ歯・総入れ歯:取り外し可能で負担が少ない

大事なのは「失った歯をそのままにしないこと」。放置すると、咬み合わせの崩れや不正咬合、他の歯の寿命にも悪影響が出ます。

治療の可能性は「ゼロ」じゃない!

「インプラントができない」と言われても、それは“永遠のNO”ではありません。一時的な状態であったり、別の角度からアプローチすれば“YES”に変わることもあります。

大切なのは、あきらめずに、相談を続けること。
信頼できる歯科医師と一緒に、あなたに合った治療方法を見つけていきましょう!

インプラント以外の選択肢とは?

選択肢

どうしてもインプラントが難しい場合には、他の選択肢もあります。

ブリッジ
⇒ 両隣の歯を支えにして、被せ物で補う方法

入れ歯(部分入れ歯・総入れ歯)
⇒ 歯茎にのせる形で人工歯を装着する方法

それぞれにメリット・デメリットがあるため、歯科医師としっかり相談したうえで選ぶことが大切です。

まとめ

自分に合った治療法を見つけるために相談を

簡単にご説明しましたが、インプラントが適応できないと言われた患者さんの場合、実際にはお一人おひとりの原因によって、様々な検査や数値のコントロールが必要になる場合が多いです。

「自分はインプラントができるのか不安…」という方こそ、早めの健診・相談が鍵です。

歯科医院では、CT撮影や血液検査などを通して、全身・口腔の状態を詳しく確認し、治療の可否を判断します。

まずは気軽に相談するところから始めましょう。
納得できる治療法を選ぶことが、満足のいく結果につながります!

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科豊中駅前アネックス・矯正歯科
院長 中西 洋介

2015年 昭和大学 歯学部卒業。日本口腔外科学会。日本有病者歯科医療学会。日本口腔内科学会。

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クローバー歯科豊中駅前アネックス

 

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